転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


416 ルディーン君の商会で扱う物



 今回も引き続きロルフさん視点です。

 鑑定解析に関しては追及をしてくれぬと言って貰えたので、わしは安心して次の話題へと移る事にした。

「さて、くだんのポーションなのじゃが、実を言うとわしやギルマスでも作る事ができる可能性が出て来ておるのじゃ」

「ベニオウの実を使うと言う、あの話だな?」

「うむ。じゃが、それはまだ仮説の段階でのぉ。その完成にはまだまだ時間がかかる」

 ラファエルの言う通り、ベニオウの実に含まれている成分と魔力を使えば少なくとも肌用ポーションを作り出せる可能性は高いじゃろう。

 しかしそれはまだ仮説でしかないのじゃ。

 だからこそ、それが完成するまでにはまだまだ実験を繰り返す必要があるじゃろうな。

「そこで一つ問題になるのが、ルディーン君が商会を開くにあたって、何を扱うかという事じゃ」

「ヴァルトよ、彼の持つ特許で得られる金を運用する組織ではだめなのか?」

「うむ。それでは商会を開く意味があまりないからのぉ」

 本来特許で得られる金は、ギルド預金に入金された時点で税金などの諸経費は引かれておる。

 じゃからそれに関しての事務手続きは必要が無いから、もしその金を扱う商会にしようと思ったらラファエルの言う通りルディーン君の金を運用するしかないじゃろう。

 しかしな、ここで一つ大きな問題が出てくるのじゃ。

 ギルドが預金を運営して金儲けができるのは、ほぼすべての都市や街に支部があるからであり、魔道具によってどの支部からでもギルド預金を使う事ができるからじゃろう。

 それに対してルディーン君の商会がそれをしようと思うと、イーノックカウと言う狭い世界での運用に限られてしまう。

 これでは得られる利は微々たるものであろうし、場合によっては働く者の賃金によってその少ない利さえ消えてしまうという事もあり得るのじゃ。

「最初はわしの家から人を出すから、人件費を心配する必要はない。じゃが商会を長く続けるとなるといずれはこの問題に突き当たる事になるじゃろうな」

「なるほど。いずれはルディーン君以外にも二つのポーションが作れるようになる、そんな希望的観測にすがって場当たり的な商会を作るべきではないとヴァルトは言いたいのだな」

 ルディーン君の名で商会を作るのじゃから、できる事ならきちんとしたものにしたい。

 そう考えると、この問題はわしらで片づけておく方がよかろうて。

「して、ヴァルトよ。そこまで話したという事は、何か腹案があるのだな?」

「うむ。実はすでに肌が少し若返る石鹸というものが出来上がっておってな。これを扱えばよいのではないかと思っておる。ただ、これも今のところルディーン君のポーションを材料として使わねば作れぬがな」

「それでは意味がないではないか」

「それがな、そうも言いきれないのじゃよ」

 この石鹸、あまり高い効果を得ようとしなければ、少量のポーションひとビンからでもかなりの数が作り出せることが解っておる。

 じゃから、実を言うと実験用にと預かっておる今の状況でも、少量なら売り出す事は可能なのじゃ。

 その上ルディーン君は、村で日常的にこの二つのポーションを作っておるようでな。

 わずかでもそのポーションを融通してもらえれば、貴族向けの高級石鹸として売り出す事は可能じゃろうとわしは思っておる。

「ところで、ラファエルよ。前に手紙で知らせてきた、村で使われておる肌用ポーションの量。あれは誠か?」

「ポーションの量か? うむ。いつの間にやら村のご婦人方だけでなく、若い娘たちも日常的に使うようになってしもうたからのぉ。今では10日ほどでツボ一杯のポーションが消費されておるわ」

 これを手紙で知らされた時は、わしは大層驚いたものじゃ。

 それはそうであろう、これほどのポーションを日常的に使っておる村など聞いた事も無いからな。

 じゃが材料となるセリアナの実は近くの村やイーノックカウから定期的に、グランリルの村の者たちが仕入れておるらしくてのぉ。

 ルディーン君はそれに魔力を込めるだけだからと言って、村でのお手伝い感覚でポーション化させておると言うのじゃから恐れ入る。

 ただラファエルの話によると、そもそもグランリルの村人たちの仕事とその稼ぐ金額から考えれば、錬金術師がポーションを作る際にもらう手間賃など手伝った子供のお駄賃程度に過ぎないらしいのじゃ。

 実際ルディーン君はクラウンコッコの魔石を数多く持っておるが、あれはすべて自分で狩ったものじゃと言っておったからのぉ。

 その上ルディーン君は、村の仕事として魔道具の修理まで行っておると言うではないか。

 それを考えると、このポーション作りも村の仕事の一つとルディーン君が考えたとておかしくはないであろうな。

 わしはその様な事を考えておったのじゃが、その時ふと周りの異変に気が付いた。

 はて、周りが少々静かすぎる気がするのぉ。

 そう思い改めて周りを見回してみると、わしとラファエル以外の皆が口をぽかんと開けて固まっておるではないか。

 そしてその中には、何とギルマスまで含まれておったのじゃから呆れかえる。

「ギルマスよ。そなたまでその様な間抜けずらをさらしてどうする」

「えっ? ああ、確かにそうですわね。でも伯爵、流石に10日でツボ一杯のポーションを使っていると聞かされれば驚きもするでしょう?」

「確かにのぉ。じゃが、ルディーン君であればそれほど不思議な話でも無かろう。あの子の魔力量なら、10日もあればその程度のポーションを作り出すなどたやすかろうて」

 なにせあの子は、わしらよりも多くの魔力を持っておるからのぉ。

 錬金術師が一度にどれだけのポーションを作れるかは、その者の魔力にかかっておる。

 そう考えるとルディーン君であれば、10日もあるのならばその程度の量を作り出してもおかしくはないのはギルマスでも解っておる事ではないか。

 そう考えたからこそ、わしはギルマスに驚くほどでもないではないかと言ったのじゃが、

「いや、ヴァルトよ。それは少し間違っておるぞ」

 ところがそこでラファエルが、わしに向かってこう申したのじゃ。

「わしが間違っておる? はて、ルディーン君ならばたやすい事じゃと思っておったのじゃが、違うのか?」

「いや、あの子が簡単にポーションを作り出していると言うのは間違ってはおらん」

 ラファエルはここで一度言葉を切ると、わしの目をじっと見た後に驚くべき告白をした。

「10日でツボ一杯分を作っておるのではない。一度にそれだけのポーションを作っておるのだ。信じられない事にな」

「なんと!」

 これにはわしも流石に驚いた。

 しかしな、その後の説明を聞くと納得させられることになったが。

「ルディーン君が言うには、もう何度もやって慣れてるから、何度かに分けるより一度にやった方が楽であろうとの事だ」

「なるほど。確かにわしらでも数本分のポーションを一度に作る事はある。そう考えると、魔物を狩ってレベルがわしらよりはるかに高くなっておるであろうルディーン君なら、たやすい事なのかもしれぬな」

 少々驚きはしたが、この情報はかなり有益じゃった。

 先ほどまでは村で使われているポーションを融通してもらおうと思っておったが、それだけの量を一度に作り出せると言うのであれば話は変わってくる。

 なにせルディーン君は、ジャンプと言う今では失われた転移魔法によって一瞬にしてこのイーノックカウとグランリルの村を移動できるからのぉ。

 そして材料となるセリアナの実の油だけならばわしやギルマスだけでなく、この街に住む錬金術師とてたやすく抽出できるのじゃ。

 今までにない商品じゃから、元々売り出すとしても本当に少量だけ扱うつもりだったのじゃ。

 それでももしルディーン君の負担になったら困ると思っておったが、それならばその心配も無かろう。

「それほど簡単にポーションが作れると言うのであれば、肌が若返る石鹸を扱う商会としてルディーン君の店を立ち上げても問題は無さそうじゃな」

「だが、ヴァルトよ。ルディーン君の名でその石鹸を売って本当に良いのか? ルディーン君が作っておる事は秘匿するのであろう?」

「心配せずとも、それについてはちゃんと考えておる。ルディーン君の商会にはわしの家の者を貸し出す事になっておるであろう? じゃからな、この石鹸はわしとギルマスが共同で開発したことにして、可愛がっておるルディーン君も彼の金を運用資金として使う事で儲けさせておると言う筋書きにするつもりじゃ」

 肌を蘇らせる石鹸はルディーン君のポーションが無ければ作り出せぬが、それはわしらが言わねば誰にも解らぬ事。

 じゃが効果が薄いとは言え、売り出せば多くの者たちが飛びつくであろう事は火を見るより明らかじゃ。

 少量ならば我がフランセン家の力でどうとでもなるであろうが、あまり大々的に広めてしまえば良からぬものを引き寄せる事になるやもしれぬ。

 わしはラファエルの言葉を聞いて、ルディーン君に災いが降りかからぬよう細心の注意を払わねばと決意を新たにしたのじゃった。 



 ルディーン君の商会で売るものが決まりました。

 ロルフさんも、せっかく肌用石鹸が完成したのだから、いつかは売り出そうと考えていたんですよね。

 でもルディーン君の事を考えるとなぁと二の足を踏んでいました。

 ところがお爺さん司祭様から、ルディーン君のとんでも性能を聞かされて一安心。

 無事、肌用石鹸が世に出る事となりました。


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